参政党、有権者向け冊子で「発達障害など存在しない」と発言していた。
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選挙におけるSNS戦術の重要性が認識されてから初めての参院選は、デマとネガキャンとスキャンダルが入り乱れる足の引っ張り合いがいつにも増して加速しています。しかしながら、単に「醜い」と切り捨ててしまうだけでは、見過ごしてはならない重要な問題点を見逃したまま、その候補者を国政に送り出す恐れがあるかもしれません。慎重な検証が欠かせません。
その重要な問題点が、参政党から見つかりました。なんでも2022年に出した有権者向け冊子「参政党Q&Aブック基礎編」の中で、「(発達障害は)通常の子ども達と全く同じ教育をすれば問題なし。そもそも発達障害など存在しません」と言い切り、発達障害の診断や存在を全否定していたそうです。
「発達障害は存在しない」の後にくるのは大抵、「気の持ちよう」「本人の甘え」といった時代錯誤の根性論か、「親の教育が悪い」と家族を追い詰める自己責任論か、「利権の為に作られた嘘」と精神医学を否定する反科学・反医学主義のいずれかだと相場で決まっています。どれだけ言い繕うとも、個人的な悪感情で喧嘩を売ったことには変わりません。
これに一般社団法人日本自閉症協会や日本発達障害ネットワークなどが猛反発しました。選挙期間中に掘り起こされた特大の地雷を看過するわけにはいかないのですが、先に反応したネットワークの方がスルーされ、その間に参政党の神谷代表が「冊子は1ヶ月の突貫工事で出したもの。今は絶版している」と釈明する隙を与えてしまっています。これは後出しの協会が「ある政党」と濁していたからと推測されます。
「ある政党が『そもそも発達障害など存在しない』と公言していますが、WHOや米国精神医学界には診断基準があり、日本国内にも超党派の議員立法で成立した発達障害支援法があります。根拠のない主張で我々当事者や家族を苦しめないでいただきたい」(日本自閉症協会)
「障害なのか、特性で済むのかは見方による。だが参政党の主張から想定される『発達障害は存在しない』という主張は支持しないし、その考え方は憲法や法令に反する可能性すらある」(同志社大学大学院教授)
「発達障害支援法は超党派による議員立法で成立した法律で、様々な形で発達障害児者やその家族へ適切な支援を届けてきました。アジア各国からも、日本の発達障害者支援について高く評価されているところです」(日本発達障害ネットワーク)
ネット上での反応は「けしからん冊子だ」という内容が多くを占め、中には「神谷代表は親学(おやがく)という、時代遅れで反科学的な主張の多いトンデモ言説の信者だった。この発言も親学の信条と似ている」という考察もありました。一方で、列挙するほどでもない逆張りの意見も散見され、医療利権の陰謀論に踊らされているのか、いつもの発達障害アンチなのかは定かではないものの、そうした声高な反応を示す向きも一定数見受けられました。
障害者福祉についての考えは、政党ごとのレベルですら能動的に調べないと掴めない(≒重要度が低いと見做されている)有様ですが、政治家が障害者について普段どう考えているかは意外な時にポロッと出ているようなものです。NHK党の党首も過去に、発達障害を否定的に捉えられかねない発言をした経緯があります。障害に関する発言や主張には、いっそうの慎重さが求められます。
参考サイト
日本自閉症協会、「そもそも発達障害など存在しない」公言の参政党を批判「まったく間違っています」
https://news.yahoo.co.jp


