「車いすでも、おしゃれを諦めない」――インクルーシブデザイン部門審査員・織田友理子さんインタビュー

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ランウェイの様子
NFDT「インクルーシブデザイン部門」の大賞作品

約2,000件の応募から選ばれた35組が虎ノ門ヒルズに集結

2026年3月29日、虎ノ門ヒルズ ステーションアトリウムにて、東京都が主催する2つのファッションコンクール「Next Fashion Designer of Tokyo(NFDT)」と「Sustainable Fashion Design Award(SFDA)」の最終審査会がファッションショー形式で開催されました。

NFDTは都内在住・在学の学生を対象としたコンクールで「フリー部門」と「インクルーシブデザイン部門」の2部門を設置。SFDAは着物の生地などを活用したサステナブルファッションに焦点を当て、「ウェア部門」「ファッショングッズ部門」の2部門で構成されています。いずれも2022年に創設され、今回で4回目の開催となります。

両コンクール合わせて約2,000件の応募が集まり、厳正な一次・二次審査を経た計35組(延べ数)の若手デザイナーが最終審査会に臨見ました。二次審査通過者は1人につき3ルックの作品を制作し、ランウェイで披露。短い制作期間の中で、それぞれが練り上げたコンセプトと高い技術力で会場を沸かせました。

豪華審査員が集結、小池都知事もエール

審査には、東京藝術大学長の日比野克彦氏をはじめ、パリコレクションで活躍するANREALAGEの森永邦彦氏、アーティストの篠原ともえ氏ら計16人が参加。パリコレデザイナーをはじめとする業界の第一線で活躍する顔ぶれが、若き才能を見極めました。

小池百合子都知事も出席し、受賞者への祝辞とともに、惜しくも受賞を逃したデザイナーたちにも再挑戦を呼びかけました。


小池百合子東京都知事

また、CFCL代表兼クリエイティブディレクターの高橋悠介氏らによるトークショーも行われ、「ファッションにおけるサステナブルの重要性~江戸から続くサステナビリティ~」をテーマに、若手デザイナーへの期待が語られました。

全4部門で計16組が受賞──注目のインクルーシブデザイン部門

審査員による選考と一般投票により、全4部門で延べ16組の受賞者が決定しました。NFDTフリー部門、SFDAウェア部門、SFDAファッショングッズ部門でもそれぞれ大賞・優秀賞・特別選抜賞が選ばれ、若き才能が花開きました。

中でも、障害のある方の着用を前提とした作品が競い合うNFDTインクルーシブデザイン部門の受賞者は以下の通りです。

 NFDT インクルーシブデザイン部門
東京都知事賞・大賞 マックファーレン七海(文化服装学院)「Unbalanced beauty」
東京都知事賞・優秀賞 井上楓陽(東京モード学園)「INVERSA」/若林唯(文化服装学院)「コルセット×ドレス」
特別選抜賞 若林唯(文化服装学院)「コルセット×ドレス」


大賞を受賞したマックファーレン七海さん

大賞を受賞したマックファーレン七海さんの作品「Unbalanced beauty」は、先天性四肢障害の身体的特徴──指の数が多かったり少なかったり、指がなかったりといった個々の違い──を、襟やポケット、シルエットといった洋服のディテールに落とし込んだ点が大きな特徴です。障害の特徴をそのままデザインの魅力に変換するという発想が高く評価されました。受賞後のインタビューでマックファーレンさんは、「今回の部門で取り組んだインクルーシブファッションを、今後もっとやっていきたい」と意欲を語りました。

受賞者には最大100万円の賞金に加え、ブランド立ち上げ支援やパリファッションウィーク期間中の作品発表といった実践的な育成プログラムが提供されます。東京都は「ファッションの拠点」として東京をパリやミラノ、ニューヨーク、ロンドンと並ぶ存在にすることを目指しており、単なるコンペティションにとどまらない「人材育成」に力を注いでいる点が本コンクールの大きな特徴です。

なお、最終審査会の模様はYouTubeでも公開されています。

「車いすでも、おしゃれを諦めない」インクルーシブデザイン部門 審査員・織田友理子さんインタビュー

インクルーシブデザイン部門の審査員を務めたのは、NPO法人WheeLog(ウィーログ)代表理事の織田友理子(おだ ゆりこ)さん。
自身も進行性の希少難病「遠位型ミオパチー」と向き合いながら、車いすユーザーが安心して外出できる社会を目指すバリアフリーマップアプリ「WheeLog!」の運営や、YouTubeチャンネル「車椅子ウォーカー」での情報発信など、「車いすでも諦めない世界をつくる」をテーマに幅広く活動を続けている。
審査会への参加は今回で4回目。当事者としてファッションとの葛藤を経験してきた織田さんに、審査会の感想、障害とファッションの関係、そして若い世代への思いを聞いた。


審査員の織田友理子さん(NPO法人WheeLog代表)

──今回の審査会はいかがでしたか?
審査会は今回で4回目になりますが、回を重ねるごとにバージョンアップされていて、学生さんの本気度がしっかり伝わってきます。皆さん全身全霊で取り組まれているのを毎回感じますし、回を重ねるごとに意味が増すプロジェクトになっていると思います。
「若い世代に活躍してほしい」「東京から羽ばたいてほしい」「ファッションで障害などの課題を解決したい」という明確な目的があるからこそ、これだけ素晴らしいアワードになっているのだと肌で感じています。

──織田さんご自身は、障害とファッションの関係についてどのように感じてこられましたか?
私は進行する病気なので、初めは手元や足元が少し弱くなるところから始まりました。ボタンが留められない、ファスナーの開け閉めが大変、着脱が難しくなる──進行するたびに大変なことがどんどん増えていきました。
そのため、ファッションは「自分にとって着られるか、着られないか」という実用性が優先で、ファッション性は二の次でずっと来ていました。そうした思いでいる中で、こうしてファッションでもインクルーシブな取り組みをしていただけるのは、本当に希望が持てることだと思っています。

──今日の作品で印象に残ったものはありましたか?
それぞれ素晴らしくて甲乙つけがたかったのですが、特に興味を持ったのは、体温や気温といった自分では体感しにくい変化を可視化してくれるデザインです。
これがあれば、周りからも「ちょっと体温が上がっているみたいだけど大丈夫?」と声をかけやすくなりますし、自分でも確認できます。赤ちゃんからお年寄り、障害や難病のある方はもちろん、健康を保つという意味でもかなり活用事例が思い浮かぶので、実用性が高いなと感じました。すごく着てみたい、使ってみたいと思いましたね。

──障害があることで、ファッションにおいてどのようなご苦労がありましたか?
体の状況がどんどん悪くなっていくので、そのたびに今まで使えていたものが使えなくなり、「どこまで自分自身でできて、どこから介助者にお願いするか」という線引きをずっと悩みながら生きてきました。
今は全介助で、脱ぎ着もすべて夫に介助してもらっています。「これ可愛いな」と思っても、手の力が弱くなっているから断念せざるを得ないファッションが本当にたくさんありました。
ただ最近は、障害の程度に応じてお直しや加工をしてくれるサービスが出てきていて、選択肢がかなり広がっています。これは障害者にとってすごくありがたいことです。

──若手デザイナーの方々に対して、期待することや伝えたいことはありますか?
今回、たくさんの学生さんたちが「障害」というものに向き合って取り組んでくださったこと自体が、一つの大きなきっかけになったと思います。この経験が彼らの視野を広げ、将来引き出しからパッと出てくるアイデアの一つになっていくと嬉しいです。
当事者の気持ちに立ってヒアリングを重ねた経験は本当に大きいものです。賞を取られた方々のほとんどがそうした努力を重ねていらっしゃいました。障害というハードルを超えることが、デザイナーとしての発想を豊かに広げるものになればいいなと思っています。

──織田さんご自身は、どのような思いで活動されていますか?
私は「車いすでも諦めない世界をつくる」という思いで団体として活動しています。
障害があると諦めざるを得ないことがすごく多くて、ファッションはその最たるものだと思います。衣食住の中でも少し後回しにされがちな部分で、「おしゃれを楽しむのは贅沢なのかな」と私自身も悩んでいました。
ですが、例えば海外の授賞式に着物を着ていくと、現地の方々がすごく喜んでくださるんです。着ているもので色々なメッセージが伝わるのだと実感しました。だからこそ、障害があっても人生の楽しみを諦めないでいられたらいいなと思っています。

──東京都がこうした取り組みを行う意義についてはどう感じていますか?
行政が旗振り役となって継続してくださっている意義は非常に高いと思います。民間企業だけではハードルが高い部分もありますから。「困難を抱える人たちが、どうすれば楽しく豊かに暮らしていける都市をつくれるか」という思いで取り組まれている姿をずっと見てきたので、これからも続けていただきたい貴重な取り組みです。

──障害のある若い世代に向けて、伝えたいことはありますか?
私自身、着物を着ていると、若い車いすユーザーの方から「私でも振袖を着られますか?」と質問をいただくことがあります。そこで「ここで頼めば着られますよ」「私はこうやって加工しました」「夫が着付けできるように工夫して、どこでも着られるようになっています」とアイデアをシェアしています。
若い方たちには、まず「諦める」という考えにならないでほしいんです。「どうにかできるかもしれない」という思いで挑戦してみてほしい。どうしてもダメな時もあるかもしれないけれど、可能性はゼロではないということを知ってほしいと思っています。

──最後に、読者の方へメッセージをお願いします。
私自身、病気になってからもう20年弱になります。進行してやがて寝たきりになる病気なので、最初は「全部ダメだ」と思って生きていました。でも、それでは何も道が開けなくて。色々な方の協力や応援をいただきながら、「自分がこれを乗り越えるんだ」という思いで当事者運動をしてきました。
世の中には、ずっと前から活動してくださった先輩方がたくさんいて、その先人たちの努力の結晶として「今」があります。一昔前を思えば世の中は良くなっていて、世界は温かくなっていると私は思っています。
捉え方次第で人生は変わっていくはずです。皆さんも一緒に励まし合いながら進んでいけたら嬉しいですね。


「Next Fashion Designer of Tokyo 2026」公式サイト
https://nfdt.metro.tokyo.lg.jp/

「Sustainable Fashion Design Award 2026」公式サイト
https://sfda.metro.tokyo.lg.jp/

障害者ドットコムニュース編集部

障害者ドットコムニュース編集部

「福祉をもっとわかりやすく!使いやすく!楽しく!」をモットーに、障害・病気をもつ方の仕事や暮らしに関する最新ニュースやコラムなどを発信していきます。
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