発達障害:子どもの時に知りたかった社会を生き抜く5つのコツ

発達障害

発達障害者が子供の頃に知りたかった5つのこと

こんにちは。国際保育士であり、発達障害当事者でもある陣内マリアです。

LD(非言語性学習障害)という発達障害を持っています。

私は「普通の子と同じように育てたい」という母の強い思いから、発達障害に関する支援を一切受けずに育ちました。そのまま大学に進学し、大手企業に就職したものの、最終的には退職を選びました。

今日は、私が社会の中で多くの苦労を経て学んできたことの中から、
「これは、大人になる前に知っておきたかった」と思うことを5つ、ご紹介したいと思います。

1-1 障害によりどうしても出来ないこと

私はLD(非言語性学習障害)を持っており、特に「知覚推理」に大きなハンディキャップがあります。

視覚からの情報を処理して理解する力が欠損しているため、学習面では図形問題や漢字の書き取り、書類作成など、「形を見て理解する」ことが求められる作業に大きな困難があります。
運動面でも、ダンスや空手のように「動きを見て覚え、再現する」タイプの活動は、どれほど努力しても限界を感じてしまいます。

しかし、私の母は「他の子と同じようになってほしい」という強い願いから、小学生の頃に診断が出ていたにもかかわらず、支援を一切受けさせませんでした。

暴力を奮いながら、図形や漢字の学習を無理に強要したり、ダンスや空手などを習わせたりすることもありました。

私は常に「できないこと」にばかり注目され、「自分は能力が低いダメな子どもだ」と思い込むようになってしまいました。

今振り返ると、障害によってどうしても難しいことに時間を費やすより、英語や文章作成など、自分の「得意で好きなこと」に力を注いだ方が、はるかに有意義だったと思います。
そのほうが自信も育ち、自己肯定感も高まっていたはずです。

1-2 学歴より資格

私は「高学歴を手に入れ、大手企業に就職することが何よりも大切だ」という教育を受けて育ちました。

進学する大学は最低でも関関同立レベル、就職先は誰もが知る大手企業でなければならない―そんな期待の中で、私は必死に勉強し、発達障害というハンディを抱えながらも母の希望をすべて叶えてきました。

しかし、実際に大手企業に入社してみると、知覚推理の弱さが原因で、パソコンでの書類作成を正確に行うことができず、徐々に仕事を任されなくなっていきました。
結果として、私は会社を退職することになりました。

その後、在宅でできる仕事を探しましたが、大手企業出身といっても、事務や営業といった一般的な職種の経験しかなかった私は、希望するような仕事を見つけることができませんでした。

転機が訪れたのは、日本とオーストラリアの両方で保育士資格を取得したことでした。その結果、教育関連のコラム執筆や、知育玩具の監修など、専門性のある仕事を任せていただけるようになりました。

自分で調べてみたところ、いくら学歴や企業名が良くても、スキルが汎用的なものであれば求人の需要は限られていると分かりました。しかし特殊な資格があれば

2級建築士:約1万件
電気工事士:約4千件
看護職:約1,000件以上
保育士:約250件以上

といったように、資格やスキルがある人材への需要は非常に高いことが分かります。

こうした現実を、もっと早く知っていたら――。

自分の適性をしっかりと見極め、好きで得意な分野の資格取得に時間を使っていたと思います。

学歴や大手企業での肩書きよりも、「どんなスキルを持っているか」が今後の人生を左右するのだと、今では強く感じています。

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1-3 社会的スキル

発達障害のある人にとって、社会的スキルはとても重要です。なぜなら、それが身についていないと、残念ながらいじめの対象になってしまうことがあるからです。

私自身、母が社会的スキルに乏しかったこともあり、周囲から浮いてしまう経験が多くありました。たとえば、水筒ではなく使用済みのペットボトルにお茶を入れて持たされたり、高校生になっても小学生低学年のような服装をさせられたりしていました。また、身体の洗い方や髪の手入れも教えてもらえず、髪が絡まったまま過ごしていたこともあります。

こうした見た目や振る舞いが原因で、私は長年いじめを受けてきました。むしろ「いじめられていなかった時期の方が少ない」と言えるほどです。

たとえ、保護者の方がお子さんに社会的スキルを教えるのが難しい場合でも、今では子ども自身が「身だしなみ」「友達との関わり方」「言葉遣い」などの社会的スキルを学べる良書が多数あります。


おすすめの一冊は
**『自分をもっと好きになる【ハピかわ】かわいいのルール』**です。

このような本を、繰り返し読み聞かせたり、子どもと一緒に内容を確認したりするだけでも、適切な社会的スキルを身につけるきっかけになります。

たとえ小さな一歩でも、正しい知識と対応があれば、いじめに遭うリスクは大きく減らせると私は感じています。

1-4 お金の使い方

私の家庭では、「必要なものがあれば親に申告し、その都度必要な金額をもらう」というルールがありました。そのため、大学生になるまで自由に使えるお金は一切ありませんでした。
私は気が優しい子どもだったので親に負担をかけるのが申し訳なく欲しいものを言い出せませんでした。

しかし今思えば、お金の使い方や価値を理解していないと、大人になってから適切な自己投資ができなかったり、無駄遣いや詐欺にあってしまったりするリスクが高くなると感じます。

たとえば、小学生のうちから月に5,000円程度のお小遣いを渡し、「その予算内で自由に買い物をする」経験をさせることで、物の価値を知ることができます。さらに、欲しいものを買うために計画を立てる力も自然と育まれます。

そうした「お金を管理する体験」は、学力よりも大切な、生きる力につながるのではないでしょうか。

1-5 危険な物から身を守る方法

発達障害のある子どもは、通常の子どもよりも虐待にさらされるリスクが高いと言われています。私自身の経験上、発達障害を隠して学校に通うと、高い確率で教員から身体的・精神的な虐待を受けると思います。特に大人しい発達障害の子だとその危険性は更に高まります。また、同級生から暴力を受けたり、大人になってからも職場で上司や同僚から精神的な虐待を受けたりするケースも少なくありません。

そんな時に、もし「被害を訴えても自分の身は守られる」「助けてくれる人が必ずいる」という知識があったなら、どれだけ心強かったかと思います。
「先生、それは暴力です。校長先生に相談します」
「怒鳴ったり人格を否定したりするのは精神的虐待です。人事に報告します」
「それは暴行です。警察に通報します」

——このような一言が言えれば、もっと早く虐待から解放されていたかもしれません。

直接相手に言えなくても、「被害の内容を記録に残し大人や校長先生、警察に伝える」といった行動ができれば、救われる可能性は確実に高まります。

だからこそ、大人は子どもたちに「被害を訴えても危害は加えられない」「何か嫌なことをされたら必ず大人に言う。それが正しい」と言うことを教えてほしいと思います。

まとめ

以上の5つが、発達障害の当事者である私が「大人になる前に知っておきたかった」と強く感じていることです。

もちろん、これらを知っていたからといって人生が劇的に変わっていたとは限りません。それでも、確実に「もう少し生きやすかった」と思います。

発達障害のあるお子さんを育てている方には、ぜひこうした情報を早いうちに伝えてあげてほしいです。たとえ小さな一歩でも、その子の人生にとって大きな支えになるはずです。

陣内マリア

陣内マリア

LD(非言語性学習障害)のある20代。とくに知覚推理の分野に大きなハンデがある。大学を卒業後、新卒で大手企業に入社したり、海外で幼児教育の資格を取って幼稚園で働いたりと、いろいろなことに挑戦してきた。けれど、発達障害にともなう困難から長く続けられず、どれも退職。今はライターとして細々と暮らしている。いつか自分にもできる仕事を見つけて、正社員として働くのが夢。

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