静かな部屋でゲンと歩く

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UnsplashMerri Jが撮影した写真


私は病気による発作が続き、外に出られず家の中で過ごす日が多くなっています。動けない時間はつらいものですが、そんな私にとって本や物語は外の世界とつながる大切な窓です。その中でも、最近改めて心に強く残ったのが中沢啓治さんの漫画『はだしのゲン』でした。
物語の舞台は、1945年8月6日の広島。アメリカの原子爆弾によって、日常が一瞬にして崩れ去る場面から始まります。主人公のゲンはまだ小学生。元気で勇敢、正義感が強い少年でしたが、爆弾は彼から家族や友人を奪い、生活をすべて変えてしまいます。それでもゲンは、泣きながらも必死に立ち上がり、生き抜こうとするのです。
私はその姿に強く胸を打たれました。私自身、病気で体が思うように動かないとき、無力さや孤独を感じることがあります。未来がどうなるのか不安でたまらないこともあります。それでも「生きたい」と思う気持ちを支えに、なんとか日々を乗り越えている自分がいます。ゲンもまた、絶望の中で「生きなければ」という思いだけを頼りに、焼け野原を歩き続けたのだと思うと、他人事ではなく、自分のことのように感じられるのです。
『はだしのゲン』には、残酷で目を覆いたくなる場面がたくさん描かれています。身体が焼けただれた人々、食べ物を求めて苦しむ子どもたち。読むのがつらいと感じる人もいるでしょう。けれど私は、あえてその痛みを知ることが大事だと思います。苦しみや悲しみから目を背けるのではなく、「こんな現実があった」と心で受け止めることこそ、平和を守る一歩につながるのではないでしょうか。


障害や病気を抱える私は、「平和」と聞くとただ戦争がない状態だけを思い浮かべるのではなく、「誰もが安心して生きられること」だと考えるようになりました。もし戦争のような状況に置かれたら、弱い立場にある人ほど真っ先に犠牲になってしまうでしょう。だからこそ平和とは、弱い人や困っている人が生きやすい社会をつくることと、決して切り離せないのだと思います。
『はだしのゲン』は、過去の悲惨な出来事を描いた漫画であると同時に、「今をどう生きるか」を問いかける作品です。私にとっては、病気や障害を抱えていても希望を失わずに生きる勇気をくれる物語です。そして読むたびに、「平和の意味を考える責任は、戦争を経験していない私たちにこそある」と強く感じます。
静かな部屋でページをめくりながら、私はゲンと一緒に歩いている気がしました。生きることは決して簡単ではないけれど、それでも諦めずに前へ進む。その姿勢こそが、私にとっての平和への答えなのかもしれません。

座敷わらしのユカ

座敷わらしのユカ

座敷わらしのユカより
おうちであなたのペースで頑張っているの、座敷わらしのユカはいつも見ておりますよ。
無理なく「できること」を大切に進めば、福も招き、応援します。
どうぞ、これからも安心して、あなたの道を歩んでいってくださいね。

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