傷病手当金をご存知ですか?~意外と知られていない制度

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※この記事は令和2年6月の法律改正にともない、記事内容を修正しました 令和3年8月21日

「傷病手当金」という制度をご存じでしょうか?病気やけがになったときに、休業中に被保険者とその家族の生活を保障するために設けられた制度です。受給するのに様々な条件がありますが、精神疾患による体調不良で会社を休職するときにも適用されます。 最長1年6か月間、支給額は1日につき、直近12か月の標準報酬月額を平均した額の30分の1に相当する額をさらに3分の2した金額を受け取れる制度です。

傷病手当を受けられる条件

受け取れる期間は「傷病手当金の支給開始日から、暦の上での1年6か月間」です。「1年6か月分受給できる」ということではありません。制度を利用するには、傷病手当申請用紙に医師証明欄に記入と退職日前に1年以上健康保険に加入していることが条件です。

気をつけなければならないのは、国民健康保険では傷病手当金は支給されません。

一般の会社員で健康保険組合に加入していると、うつ病などで会社を休職した場合、傷病手当金が支給されます。ただし条件が場合があります。詳しくは現在加入している健康保険組合に問い合わせることが確実です。

受給要件は、業務外の理由による病気もしくは怪我となります。働けない理由を医師の診断書に書いてもらいます。病気もしくは怪我で3日間、仕事を休んだ期間が連続で3日間あり、4日以上仕事に就けなかった場合、4日目から支給されます。この連続した休みの3日間は待機期間と言われています。病気や怪我のため、休業している期間について生活保障を行う制度のため、障害年金を受給している、もしくは給与の支払いがあっても、傷病手当金より少ない場合は、調整された金額が支給されます。ケースバイケースなのので、疑問があった場合、近くの健保組合に問い合わせた方が良いでしょう。直接訪ねてもいいですし、電話で相談するのもでいいでしょう。

具体的な申請方法

まずは会社を退職する前に病院に通い、主治医の意見書を書いてもらうことをお勧めします。「〇か月加療が必要」など診断書で書いてもらい、会社と相談して下さい。有休が残っていたら有休を消化してから、休職扱いにしてもらいましょう。ただ、有休が無くなれば、健康保険と厚生年金は会社から請求されますので、マイナスの給料明細が届くことになります。

その後、勤めている会社といつ仕事に復帰できるかを話し合うことになるでしょう。もし、うつ病で休職しているときは、なかなか考えがまとまらず、決断が難しいと思います。そこで、今の会社に復職して続けていけるか、続けられないかの判断は本人の意志になります。会社と話し合う前に、主治医や周囲の意見を聞いて、違う環境で仕事をした方が良いのか、復職できるなら、そうしたほうがいいのかをあらかじめ決めておいたほうがいいでしょう。

もし、今の会社を退職して違う環境で仕事をしたほうがいいと判断したら、はっきり会社に伝えましょう。精神疾患が原因で退職しても、離職票には自己都合退職扱いにされます。これは障害者を雇っている特例子会社でも例外ではありません。傷病手当金を退職前に受給しておくことが、大切になってきます。

傷病手当金を受給せずに退職し、就職活動を始めてもメンタル面で不安を抱えて、そのまま自己都合で退職してしまうと、失業保険では2か月の待機期間が発生します。いくら貯蓄がある人でも、生活面での不安とメンタル面での不安が混じり、思うように次の就職に結び付けることは難しくなると思います。

傷病手当金を受給している間は、失業保険が適用されません。傷病手当金から失業保険に切り替えるには、健康保険組合からの傷病手当金を終了してもらう必要があります。「病気やけがの状態が良くなったので、傷病保険を終了する」と報告しましょう。30日以上職に就けない場合、雇用保険の基本手当の受給期間を本来3年である受給期間の満了日を最大で4年に延長できます。(令和2年6月法律改正)

会社によっては傷病手当金を受けるさいに、総務課などから傷病手当金申請書を渡される場合もあります。たとえ、会社から傷病手当申請書がもらえなくても、各都道府県の健保組合のホームページから印刷できます。

それができない場合は、各健保協会に直接出向いて、書類をもらうことも出来ます。書類は各健保協会によって違いますので注意してください。傷病手当金を受け取れる期間は最大1年6ヵ月と期間は決まっています。それ以上はいかなる理由があっても、傷病手当金は継続はできません。もし、障害者手帳を取得していない場合、障害者手帳の取得を考えている方は、この期間に申請しておいた方がいいでしょう。

傷病手当金を申請するときは、傷病手当申請用紙4枚目の「療養担当者記入書」を医師に書いてもらうことが必要です。注意してほしいのが病院が出した診断書を医師意見書の代わりとすることはできません。必ず傷病手当申請書に記入してもらってください。書類をそろえたら、郵送で自分が住んでいる各都道府県健保協会に提出します。

どれぐらいの期間で申請するかは人それぞれですが、1か月単位で申請するほうが、分かりやすくていいかも知れません。私自身は1か月単位で申請していました。書類に不備が無ければ、大体2週間程度で給料の約3分の2程度の額が指定の口座に振り込まれます。詳しくは「協会けんぽ」で検索してホームページから最新の情報を必ず確認してください。

傷病手当金を受給するメリットとデメリット

傷病手当金を受給している間に、じっくりと症状を緩和する時間が取れるメリットがあります。いわゆる時間薬です。傷病手当金の受給期間中に障害者手帳を申請するのもいいでしょう。焦らず、治療や休養に時間を当てられます。これがメリットとして挙げられます。

ですが、もしクローズ就職を考えているなら、履歴書に空白期間が発生することもデメリットになります。オープンでもクローズでも、面接で空白期間は必ず質問されます。ですが、障害を開示しないクローズでは、面接官からの印象は「空白期間は何もしていなかったの?」というふうに考えられ、心証は良くはならないでしょう。

まとめ

怪我ではなく、うつ病や精神疾患で長期休養をして、就職活動をする場合は、障害者手帳を取るべきか取らないかほうがいいのか、どちらが正解ということはありません。ただ、このような傷病手当金制度を知らずに退職に追いやられて、生活面で困っている人がいたのも事実です。役所は申請主義なので、自分から申請しないとどのような制度があるのか、会社が教えてくれない場合、知る術がありません。

もし、これを読んでいて、仕事で精神的に追い詰められいる方は、有休を活用する、もしくは数か月単位で会社を休職して、心と身体をリフレッシュしてから復職するという手段もあります。しかし、そのような機会を与えてくれる会社は多くはありません。否が応でも退職を迫られるのがこともあるでしょう。かつて私が勤めていた会社がそう言う体質でしたから……。

精神的に追い詰められて退職を考えている方、もしくは会社から退職の圧力を感じて思い詰めている方は、すぐに退職をする前に少し考えてください。

参考文献

全国健康保険協会
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/

【厚生労働省 離職されたみなさまへ】
https://www.mhlw.go.jp/

【東京ハローワーク 求職者給付に関するQ&A】
https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-hellowork/

 

 

tkbn

tkbn

40代男性。30代半ばでうつ病を発症。40代になって発達障害の疑いありと診断される。就労支援機関で自分の特性について学び、最後の就活を終えコラムを書いています。趣味は鉱石収集。年2回大阪・京都で行わるミネラルショーや即売会に行って、気に入ったものをコレクションするのが楽しみですが、部屋で飾る場所が無くなっているのが最近の悩みです。

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