発達障害と身体障害~ボランティアを通して
暮らし 発達障害 身体障害出典:Photo by Theodor Vasile on Unsplash
障害は精神障害、発達障害、知的障害などの間接的に日常に支障をきたすものと、身体障害のように直接的に日常に支障が出るものの2つに分けることができます。
今回のコラムでは、視覚障害の方へのボランティア経験を踏まえ、発達障害の私が思う身体障害との違いについて書いていきます。
視覚障害者との出会い
私は母の関係で視覚障害をもつ方(以降、Aさんとします)と幼少期に出会いました。
この時から母はAさんにボランティアとして身の回りで困ったことのお手伝いをしていました。母は学生のころから福祉関連の仕事にも興味があったようで、その影響でお手伝いをしていると聞いています。
そのころの私は子供で、発達障害の診断を受けていなかったため、身体障害ということを特に重く受け止めていなかった気がします。
幼少期にAさんと出会って以降、現在まで様々な形で関わりを持たせていただくことになります。
Aさんの人生~視覚障害者の生活
Aさんは幼いころに先天的な理由で視覚を失い、以降はなにも見えない世界で生きてこられました。
そのため、かろうじて色などは頭の中で認識できるものの、大多数のものは見た目がわからないとうかがっています。
私は視力が悪く、0.05程度ですが、その状態でもメガネを外して生きていくことは難しいレベルです。ましてや、全く視界がない中、生きていくのは想像を絶するほどの困難でしょう。
ちなみに、Aさんは小さいころから盲導犬と生活されてきたとのことです。
ご存知の方も多いと思いますが、盲導犬とは視覚障害者の方が安全に移動や生活ができるように誘導を行う犬です。盲導犬は2才ごろまで訓練を行い、その後10才(人間の年齢では60才ほど)になるまでの間、主人のパートナーとして付き添います。
とはいえ、盲導犬と息が合って仲良くなるまでは、1年ほどかかります。ここでも苦労されてきたと思います。
Aさんは視覚に障害を抱えているため、特別支援学校に通っていました。
特別支援学校とは視覚障害を含む、身体障害者に高校までの教育を行う特殊な学校です。現在では、視覚障害者向けの特別支援学校のことを「盲学校」と呼びます。
特別支援学校では、通常の教育の他に点字を習います。点字は6つの点で表現される文字の1種で、手で触ることにより視覚障害の方も物での意思疎通ができます。
ここで部活動などの学生生活も楽しみながら、しっかりと基礎教育を学んで過ごしたそうです。
卒業後は「あはき業」に従事し、数年後に通っていた特別支援学校で知り合った視覚障害の方と結婚なさいました。
結婚後は夫婦でマッサージ屋を開いて生活をはじめ、お子さんもいます。
80才ほどになられた現在は、視覚障害の認知のために様々な小学校を回って教えをとかれています。
さらに、学生時代からやっていた視覚障害スポーツのコーチなどもされているようです。
ちなみに、パートナーの方は現役でマッサージ師として元気に働かれています。
視覚障害での支障
視覚障害における具体的な支障とはいったいなんでしょうか?
視覚障害には等級があり、見えにくい人から、Aさんのように全く見えない人まで、6段階に分かれていますが、ここではその中でも「全く見えないの人」の支障について述べていきます。
まず「外が歩けない」点が真っ先にあげられるでしょう。
もちろんですが、目が見えない状況では、道路が認識できません。そんな中、車やバイクの前に出てしまうと命を落とす危険性があります。
また、看板や電柱、階段などの何気ないものも、けがにつながる可能性があります。Aさんは電柱などに何度か激突したことがあり、酷い時は何針か縫うけがをしたこともあるそうです。
そんな視覚障害者の助けになってくれるのが、点字ブロックです。
点字ブロックは形によって安全な順路や危険な場所をあらわしており、足から直接情報を得ることができます。
なので、点字ブロックの上で長時間止まったり、駐車・駐輪をするのは視覚障害者に迷惑になりますので、そのような行為はできるだけ控えましょう。
さらに、家でも日常生活に様々な支障をきたします。
例えば食事の時に飲み物や食べ物の位置が把握できず、食べづらくなります。人によっては指で飲み物の量を確認されます。
しかも、食べにくいだけならともかく、味噌汁やハンバーグといった温かい食べ物であればやけどにつながる恐れもあります。また、調理自体も包丁や鍋などの危険度が上がります。
他にも「移動が難しい」「物が見つけにくい」「人の場所を判断しにくい」などの日常生活で重要な様々なことに支障がでます。
さらに「本が読めない」「テレビ、PC、スマホが見れない」「スポーツが難しい」といった娯楽面にも影響があります。
仕事面も同じように支障が多く、通常の仕事に就くのが困難です。
現在視覚障害者で就業している人のうち、半数以上が「あはき業」といわれる、いわゆる「マッサージ業」に従事しています。
視覚障害の方は視覚が不自由な反面、触覚などの他の感覚が鋭くなるため、向いている職業なのかもしれません。
近年はPC技術の発達により音声読み上げ、入力ソフトなどが開発され、以前よりはIT業界でも働きやすいようですが、非障害者より選択肢が圧倒的に少ないのは間違いないでしょう。
発達障害と身体障害の違い
症状以外で一番に挙げられるのはやはり「日常への支障の形」です。
例えばADHDにおいて、よくあげられる支障はスケジュールのもれや忘れ物の多さなど、ASDにおいては、雑談などの日常会話ができない、こだわりが強いなどです。
このように、発達障害では物事に対して間接的な支障が多くなり、身体障害ではそもそも物事ができないという直接的な支障が多くなります。
もう1つ、大きなものとしては「世間からの見られ方」です。
身体障害の方は見てわかる場合も多く、気づかわれやすい場合が多いです。
一方、発達障害の場合は人によって通じ方が変わり、ときには根性論で押してくる人もいます。
もちろん、どちらも疎まれたり、煙たがられることもありますが、より発達障害の方が気づかわれにくく感じます。
その他、様々な点があげられますが、日常や仕事に支障が出るという点は共通しており、どちらも辛いものです。
障害を言い訳にしてはいけない
Aさんは生活に必要最低限のことはガイドヘルパーなどを頼り、一緒にやってもらったり、お任せすることがあります。
ですが、全てをお願いすることはなく、できる限りのことは自分でやると心がけていらっしゃいます。
料理、洗濯などの家事はほとんどご自身でなさいますし、買い物も宅配を頼むなどなるべく迷惑を掛けないようにしているようです。
このことに関して、私はなぜなのかお伺いしたことがあります。
その問いにAさんは「障害を言い訳にしたくない」と返してくださいました。
障害がいくら生まれ持ったもので、仕方がないとしても、なにかをやっていただくのは相手に"お願いしている"ことです。
これはあくまで障害を無理やり乗り越えろというわけではなく、はじめから諦めずやってみようということです。
この考えは就職などの際でも同じだと私は思います。
障害を持っている方は、乗り越えられない、業務上支障があることを「配慮事項」として特別な対処をお願いする場合があります。
この配慮もあくまでこちらが"お願いすること"であり、あたりまえではありません。
悲しいことに、障害を理由になにかを人にやってもらうことがあたりまえと思っている人はいます。
せめて、感謝だけは忘れてはいけないとは私は思います。
おわりに
今回は発達障害と身体障害について、私の実体験を踏まえてご紹介しました。
発障達害と身体障害の症状や見られ方など、様々な点で大きく異なっています。
とはいえ、どちらも日常や仕事に支障がでる「障害」であり、互いに参考にしあえるところも多くあります。
どちらも大変なことが多いとは思いますが「感謝」を忘れず、頑張っていく必要があると私は思います。
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