受援力~助けを求め、支援を受ける力
暮らし 発達障害出典:Photo by Marc-Olivier Jodoin on Unsplash
まず初めに「受援力」という単語についてですが、2010年に内閣府が出した「防災ボランティア活動を上手く受け入れるための知恵」などをまとめたパンフレットの中で用いられた言葉です。パンフレット内では、ボランティアを地域で受け入れる能力のことを指すようですが「支援を受ける力」として広く使われるようになってきました。
どうして発達障害と受援力?
発達障害の人にとって、受援力はより必要なスキルであるでしょう。なぜならば、日々の生活の中で苦労する場面が多くなりやすいからです。そういったときに適切に助けを求めて、支援を受けることがいかに大切か分かると思います。
これは日常生活と仕事のどちらでも適用できることです。日常生活であれば、家族や友人などの誰かが助けになってくれるでしょうし、仕事の中でも上司や同僚は業務のためでもあるので、可能な範囲で助けてくれることでしょう。
さらに発達障害と分かっていれば、それに向けた支援施設や制度が存在します。発達障害向けの施設の窓口や職員の方に相談をすれば、適切なアドバイスをおそらくしてくれますし、制度では金銭面の補助などでサポートをしてくれるはずです。
助けを求め、支援を受けることが大事であるのに加えて、発達障害の人はより日々の生活で苦労しやすいはずです。それにもかかわらず、この受援力が低い人が多いように思います。一体何が、助けを求めることに抵抗や壁を生み出しているのでしょうか。
苦手なのはなぜ?
まずは、そもそもの相談する能力が不足している場合でしょうか。多くの人に当てはまることですが、発達障害であるとよりその傾向が強いです。
例えば「困りごとは自分だけで解決すべき」という気持ちがある場合です。これは、日本人によく見られそうな「他人に迷惑を掛けたくない」「自己責任である」といったような意識もあれば「弱みを見せたくない」「自分だけでどうにかできるはず」といったような、プライドや過信も人によってはあることでしょう。
次にありそうなことは「いったい誰に助けを求めればいいのか分からない」という場合です。これは普段から相談することがほぼないと、意外と思いつかないかもしれません。他にも、なかなか勇気が持てないなどのコミュニケーション能力が影響しているかもしれません。できそうな相手がいないという周囲の環境の問題もあるかもしれません。
最後に発達障害特有といえそうな問題は「先延ばしにする癖」「面倒なことを避けたがる」「タスク過多になるのが苦手」といったものです。何か助けを求めようとするのも、気力や労力を要するので、なかなか思い切りがつかず、自分の中だけで悩み続けがちです。
しかし、そういう場合に面倒だからと助けを求めず、自分でどうにかしようとするのは得策ではありません。多くの場合において、自分だけで頑張る労力よりも、誰かに助けてもらおうと踏み切る労力の方が総合的には低くなるはずです。
では一体どうすれば、上手く助けを求め、支援を受けることができるのでしょうか?
では、どうすべきなのか?
まずは、最初にあげた「自分だけで解決すべき」という考え方を修正していくといいでしょう。
自分だけでどうにかしよう、どうにかすべきという考えが得策でないときがあることを認識することが大事です。そもそも助けてもらう必要はない、恥だと思うのであればそれが誤った理解であることを認識すべきです、人は日々の生活の中で見えないところで誰かの助けを受けて生きているのです。
次に習慣付けが重要だと思います。日ごろから、迷ったり困ったりしたことがあったら、軽くでもいいので相談するようにしておくことです。今までしてこなかったのに、本当に困り果てたときに急にできるかといわれるとどうでしょうか。疲れていると判断力や行動力も落ちて、できないまま自分の殻に閉じこもってしまいます。
信頼できる身近な家族や友人に話してみて、上手くいくならそれでいいですし、難しいと判断したら相談できそうな施設などを調べておきましょう。こちらも本当に困ったときに考えたり、調べたりする余裕はありません。
発達障害にありがちな先延ばしや、タスク過多での混乱に対しては、情報の整理をすることが1つの手段です。
「現状がどうなっているか」「タスクとしては何をするべきか」「どういったメリットがありそうか」を具体的に書き出してみましょう。これには「自分が置かれている状況と何が問題なのかを見つめ直せる」「するべきことを整理できる」「結果としてえられそうなものを具体的に知ることができる」という効果があります。
具体性がある方が理解しやすいですし、やるべきことがそれほど多くないのに気づける場合も多いでしょう。余裕があれば、どれくらいの時間がかかるかの大まかな見積もりまでできればより理想的です。
他の方法としては「信頼できる人に話して方針を任せてしまう」というのも1つの手です。まとまった相談内容になっていなくても、困っているということだけ伝えて、情報は後から出していけば何とかなることも多いはずです。
受援力という言葉からそれを高める方法まで説明してきました。発達障害者の方は苦労しやすい場面も多く、そういうときに助けてもらえた方が生きやすいはずです。そのためにも受援力は意識していくべきです。
助けてもらう側のことを中心に書きましたが、余裕があるときは他の人を助ける側に回ることも大切です。助ける側の心理を理解できるのも受援力を高めることにつながるでしょう。誰かを助けて、感謝してもらえるというのは気分がいいものです。
世の中、たがいに無理のない範囲で助け合う方が居心地よく過ごせるはずです。日常の小さなことでも助けてもらって、相手に感謝の言葉を伝えるところからまずは始めてみませんか?
参考文献
【パンフレットについて|内閣府(災害予防担当)】
https://www.bousai.go.jp
【「受援力」って何? 上手に頼って子育てを楽しく|ベネッセ教育情報サイト】
https://benesse.jp
【困っていても助けを求められない|発達障害-自閉症.net】
https://hattatu-jihei.net
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