東京宝塚劇場のアクセシビリティ向上取り組みについて

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デフリンピックの開催を契機に都内で始まったキャンペーン「オールウェルカム TOKYO」では、誰もが芸術文化を楽しめる東京を目指し様々なアクセシビリティ向上への取り組みがなされています。その中に、東京宝塚劇場も名を連ねていました。

東京宝塚劇場は、宝塚歌劇が東京で公演するための施設で、東京芸術文化鑑賞サポート助成を活用したアクセシビリティ向上に今回取り組んでいます。この助成金制度は、今年度から都内の公演であればたとえ都外の団体でも受けられるよう範囲が拡大されており、昨年度より1か月以上早く募集が締め切られるほど業界内での注目も高かったです。

アクセシビリティを意識したきっかけ

演劇の公演という業界にも、あらゆる観客を迎えよという合理的配慮の波は押し寄せ、アクセシビリティ向上の義務化が進んでいきました。直接の契機となったのは2020年のコロナ禍に伴う公演停止で、この頃から本格的な取り組みについて考え実践するようになります。

新しいサービスの基本方針は、とにかく幅広く取り組むこと。サービスしていない分野を埋めていき、幅広くカバーしていくことを優先してきました。台本タブレットやリアルタイム字幕の他、バリアフリー情報の拡散などが実際の取り組みとして存在します。ただ漫然と提供するのではなく、継続的な提供、特殊でない一般的な技術の利用、公演初日からの素早い提供もまた心がけられています。

実際の取り組み

これまで実装された取り組みとして、主に聴覚障害者向けのサービスが紹介されました。これまでに台数不足によって貸し出しを断ったことはなく、必要に応じて他の劇場と調整しながら機材の数を合わせることも可能らしいです。

イヤホンガイド
東京都の助成を受けて実装したイヤホンガイドの特色は、障害者手帳の有無を問わず使えることです。これにより、手帳が出るほどでもないグレーゾーンの難聴でも利用でき、セリフの把握がしやすくなります。

鑑賞サポートタブレット
タブレット端末を貸し出し、台本のセリフやト書きをPDFで表示できるようにします。1公演当たり平均15台は借りられており、人気の高いサービスです。原則、障害者手帳のある人が対象ですが、無くても観劇日の2日前時点で空きがあれば利用できるそうです。

FM方式聴覚補助機器
直近の上演である「G.O.A.T」の東京公演から導入されたばかりのサービスです。FM方式は赤外線と異なり、座席の場所や向きに影響されず全席でクリアな音声をイヤホンや人工内耳などで届けることが出来ます。

視覚サポート
視覚障害者向けのサポートとして、インターネット電子図書館「サピエ図書館」へ音声状況を提供しています。これにより、視覚にハンデがある人でも公演の配役やあらすじを事前に把握しやすくなります。

運用する上での課題

一方、実際にサービスを提供していく中で見えてきた課題もあります。

サービスの精度
リアルタイム字幕(UDトーク)の精度は完璧ではなく、誤った読み取りをすることがあります。作品名、出演者名、専門用語などを事前に辞書登録して対策はしていますが、複数人が同時に話す場面に弱いのは依然として残る課題です。

多様化するニーズ
観客のあらゆるハンデやバリアに対応できるのが理想ですが、新しい取り組みを始めるにはどうしても時間がかかり、年に1つずつペースでの改善が精一杯です。実際に観劇する層だけでなく、その前段階への情報伝達も課題として認識しており、例えば公式Webサイトのデザイン性とアクセシビリティの両立について検討している最中です。まずは当事者へ知ってもらうことが、サービスの存在意義を高める第一歩となります。ところが、チケット販売ひとつとっても即完売が当たり前だったり、車椅子でのアクセスが複雑で一部劇場の管理していないエレベーターも挟む問題があったりするのも現実です。

著作権の問題
公演に合理的配慮を盛り込むにあたって難しいのは、意外なことに著作権の問題です。公演作品の原作IPや台本の著作権との兼ね合いが非常に難しく、字幕生成や台本提供といったサポート導入への大きな壁となっているそうです。現行制度の枠内で出来るよう頑張っているとのことですが、新しいサポートを導入する上で著作権が立ちはだかることも頭に入れておかねばなりません。


視覚・聴覚障がいのあるお客様へのご案内/宝塚歌劇公式ホームページ
https://kageki.hankyu.co.jp/

障害者ドットコムニュース編集部

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