「付き添い入院」のご家族に、心と身体の休息を──東京都立小児総合医療センターに国内2カ所目のファミリールームがオープン
ニュース 身体障害 その他の障害・病気
「ドナルド・マクドナルド・ファミリールーム 東京都立小児総合医療センター」開所式(2026年4月28日、東京都府中市)
「付き添い入院」という、知られざる小児医療の課題
子どもが入院する際、その家族が病室に寝泊まりしながら看病を行う「付き添い入院」をご存じでしょうか。
子どもにとっては大きな支えとなる一方で、ご家族には大きな精神的・肉体的・経済的負担が生じます。"小児医療の知られざる課題"として、近年ようやく社会的な議論の対象になり始めたテーマです。
全国で難病に苦しむ子どもの数は推計10万人以上といわれます。厚生労働省の「令和6年度 衛生行政報告例」によると、小児慢性特定疾病医療受給者証(小児慢性特定疾病の医療費助成を受けるための証明書)の所持者数は109,191名にのぼります。
こうした子どもたちの多くは、大学病院や小児病院など、設備とスタッフの揃った遠方の専門病院で治療を受けています。付き添うご家族には、家族が離れて暮らす精神的負担、食事や睡眠環境などの肉体的負担、そして自宅と入院先との二重生活による経済的負担が重くのしかかります。
国としても対応は始まっています。厚生労働省は2024年6月の診療報酬改定で、小児病棟への保育士・看護助手配置への加算を強化しました。夜間の看護助手配置にも新たな補助が設けられ、家族が夜間に休んだり食事をとったりしやすい環境整備が進められています。
ただし、制度が整うまでには時間がかかります。今この瞬間に病室で子どもの隣に座り続けているご家族にとって、必要なのは「いま、ここで休める場所」です。
ご家族が少しでも良いコンディションで子どもと向き合える環境を整えることは、子どもの笑顔や治療に臨む力にも繋がります。子どもと家族の双方を支える環境づくりが、いま社会全体に求められています。
そんな中、2026年5月15日(金)、東京都府中市の東京都立小児総合医療センター内に、新たな"心と身体の休息場所"がオープンします。
「ファミリールーム」と「ハウス」、二つの施設の役割の違い
公益財団法人ドナルド・マクドナルド・ハウス・チャリティーズ・ジャパン(以下、DMHC)と地方独立行政法人 東京都立病院機構 東京都立小児総合医療センター(以下、小児総合医療センター)は、「ドナルド・マクドナルド・ファミリールーム 東京都立小児総合医療センター」を、5月15日に開設します。
注目すべきは、同一の病院に「ファミリールーム」と「ドナルド・マクドナルド・ハウス」(以下、ハウス)の両施設が設置されるのは全国初という点です。
役割の異なる二つの施設を併設することで、付き添い家族をより多面的に支援することを目指しています。
両施設の違いを整理すると、以下のようになります。
ドナルド・マクドナルド・ハウス
- 国内施設数:12カ所
- 対象:遠方から入院・通院している子どもと
その付き添い家族 - 開設場所:病院に隣接(病院敷地内や徒歩圏内)
- 施設形態:滞在施設
ドナルド・マクドナルド・ファミリールーム
- 国内施設数:2カ所
- 対象:入院している子どもの付き添い家族
(自宅から病院の距離は問わない) - 開設場所:病院内(ハウスよりさらに病室に近い)
- 施設形態:休息場所
「ハウス」は遠方からの入院・通院家族にとっての"第二のわが家"です。就寝時など、まとまった時間でしっかりと休息したいご家族や、ごきょうだいも含めて家族で滞在したいご家族のための、生活の拠点となります。
一方の「ファミリールーム」は、病院内に設置された休息場所です。お子さんの病状によっては、まとまった時間、病室を離れることが難しいご家族も多くいらっしゃいます。そうしたご家族が、限られた隙間時間を利用して、病室になるべく近い場所で気軽に休息できる場所として設計されました。
ハウスのみではサポートが難しかった付き添い家族に対して、病院内での休息環境を整備することで、より多くのご家族を支えることができるようになります。
年間延べ7,900人以上を支える、東京都立小児総合医療センターの取り組み
今回ファミリールームが開設される小児総合医療センターは、2010年3月に設立された、東京都における小児医療の拠点病院です。
小児の「こころ」と「からだ」を統合した高度・専門医療と、急性期医療を提供しており、胎児期から思春期・成人期まで総合的な成育医療を担っています。病床数は561床、診療科は総合診療科から児童・思春期精神科、新生児科、リハビリテーション科まで30以上にわたります。
同院では年間延べ7,900人以上のご家族が、子どもの入院に付き添っておられます。
DMHCと小児総合医療センターは、長きにわたって付き添い入院の負担軽減に取り組んできました。同院の敷地内には、自宅から遠方の病院で子どもの治療に付き添うご家族のための滞在施設「ドナルド・マクドナルド・ハウス ふちゅう(ふちゅうハウス)」が、2010年3月に共同で設置されています。

2010年に設置された「ドナルド・マクドナルド・ハウス ふちゅう」外観
DMHCの取り組みは全国に広がっており、国内のハウスは累計利用ご家族数が、2026年3月3日にのべ10万家族を突破しました。さらに2026年4月1日からは、利用ご家族の経済的負担に対する支援を強化するため、ハウスの利用料を従来の1人1日1,000円から無償化しています。
そして今回、病院内の休息環境をさらに強化するため、ファミリールームを新たに開設することになりました。
これにより、敷地内の「ハウス」と病院内の「ファミリールーム」が連動して、付き添い家族のさまざまなニーズに応える体制が整います。
「ホッとできる場所」を目指して──施設の特徴と運営

病院最上階7階に設置されたファミリールームのダイニング。軽食やコーヒーをとりながら、付き添い家族がひととき休息できる
「東京都立小児総合医療センターファミリールーム」は、病院の最上階である7階に設置されています。
延床面積は165㎡。屋内97㎡に加え、屋外には花と緑で彩られたデッキ68㎡を備えた施設です。
ルーム内には、軽食が摂れるダイニングやミニキッチンをはじめ、仮眠も可能なマッサージチェアルーム(半個室)、搾乳室(個室)などが揃っています。
ご家族からのご要望が多い食事面のサポートとして、電子レンジ、トースター、ケトル、シンク、コーヒーメーカー、冷蔵・冷凍庫を設置。さらに軽食や冷凍食品、飲料などは、企業・団体・個人の支援者からの寄付により無償で提供されます。ルーム自体の利用料も無料です。
窓際のカウンタースペースでは、お食事や休憩に加え、付き添い入院の合間で必要となるパソコン作業なども行うことができます。
特に注目したいのが、付き添い家族のお声から生まれた「寝ころび部屋」(個室)です。

付き添い家族のアンケートで多かった「脚を投げ出して寝ころびたい」という声から生まれた個室「寝ころび部屋」
ファミリールームマネージャーは、付き添い家族へのアンケートで多かった「脚を投げ出して寝ころびたい」という声から、この部屋を設けたといいます。脚を伸ばしてゆったりとくつろげる空間で、よりリラックスして過ごすことができます。
大きな窓の向こうには屋外デッキが広がり、開放感のある眺めを楽しんだり、外の空気を吸ってリフレッシュすることも可能です。
ルーム全体の運営時間は9時から21時まで。日常の運営は、多くのボランティアの協力のもと、常勤のファミリールームマネージャーが行います。
開所式で語られた、現場の声
開所式で行われたトークセッション。付き添い経験家族・看護師長・ファミリールームマネージャーが現場の声を語った
オープンに先立ち4月28日(火)に行われた開所式では、関係者によるトークセッションも実施されました。
実際に同病院で付き添い入院を経験されたご家族、東京都立小児総合医療センターの看護師、ならびにファミリールームマネージャーが、それぞれの立場から現場の体験を語りました。
付き添い入院を経験されたご家族の声
「突然の入院で、不安でいっぱいでした。子どもはそばを離れれば泣いてしまいますし、子どもが病気と闘っているなかで自分だけが休憩に行くことはできず、自分の食事やお手洗いを済ませるのも一苦労でした」
「夜間も血圧や体温の測定などで目が覚めてしまったり、同部屋の他のお子さんの泣き声が聞こえてくるため、熟睡できた日は一日もありませんでした。また、体調が悪化していく子どもの様子を見ていると、私もとても苦しく、心身ともに疲弊していきました」
「付き添う親が『一人になる』ことにも勇気が必要です。ファミリールームができることで、休憩して気持ちを切り替え、また笑顔で子どもの前に戻ることができ、それによって子どもの元気にも繋がると思います」
東京都立小児総合医療センター 看護師長の声
「病院内は、昼夜問わずアラーム音や他のお子さんの泣き声・人の気配があり、ご家族は非日常な環境で生活をしています」
「ご家族は、お子さんの前では疲れを一切見せず気丈に振る舞っていらっしゃいます。私たちとしては、ご家族の方に少しでも休んでいただきたいと思っていますが、実際には『少し休憩してきます』とおっしゃっても、すぐに戻ってこられる方が多くいらっしゃいます」
「子どもたちだけでなくご家族のサポートも小児看護の重要な役割です。ファミリールームに助けてもらいながら、子どもと付き添い家族をサポートしていきたいと思います」
ファミリールームマネージャーの声
「これまで見てきた付き添い家族の様子から、『ご家族がお子さんのそばを離れることの大変さ』を感じてきました。そうしたなかで、病室から近い場所で、少しでも鎧を脱いで心身をほぐしていただき、自然とお子さんの前に笑顔で戻れる場所を作りたいという想いがありました」
「ファミリールームは『ホッとできる場所』を目指しています。看護師さん達のお声も聞いて、部屋の色味や素材、椅子選びまで、ご家族のためにこだわりました」
「今後、ファミリールームがご家族にとって『一人じゃないと感じられる場所』と同時に、『一人になれる場所』になってほしいと思います」
DMHC理事長 岩中督氏のメッセージ
DMHC理事長の岩中督氏は、開所にあたり次のようにコメントしています。
「小児医療の現場において、ご家族がお子さんと一緒にいられる環境は、治療にも大変大きな意味を持ちます。私どもは、ご家族が子どものケアや治療方針などの意思決定に参加することを大切に考え、ご家族を治療の中心にすえた『ファミリー・センタード・ケア』の実現を目指して、活動してまいりました」
「ご家族が病室に寝泊まりしながら看病を行う『付き添い入院』は、お子さんにとって大きな支えである一方で、ご家族にとっては精神的・肉体的・経済的な負担を伴うのも事実です。両施設がそれぞれの役割を担いながら医療機関と連携し、付き添い家族への支援を、さらに強化してまいります」
東京都立小児総合医療センター院長 山岸敬幸氏のメッセージ
「医療の進歩により多くの子どもたちが回復し、次の成長へと歩みを進められるようになった一方で、その傍らには、長期にわたり不安と緊張の中で付き添い続けるご家族の姿があります。十分な休息や食事もままならず、心身に大きな負担を抱えている現状は、現場に身を置く者として看過できないものでした」
「『家族を支えることは子どもの医療を支えることにつながる』という考えのもと、病棟に近接したファミリールームを整備できたことをとてもうれしく思います。本施設は、付き添い入院のストレスで疲弊したご家族が、心身を整え、再び子どもに向き合う力を取り戻すための場であり、小児医療の質を高める新たなモデルであると考えております」
開所式には、府中市長の高野律雄氏ほか来賓からの祝辞に加え、東京都知事の小池百合子氏からもビデオメッセージにて祝辞が寄せられました。
施設概要・利用案内
「東京都立小児総合医療センターファミリールーム」概要
住所:東京都府中市武蔵台2-8-29 東京都立小児総合医療センター
アクセス:JR中央線・武蔵野線「西国分寺」駅より徒歩約15分/JR中央線「国立」駅よりバスで10分
利用対象者:東京都立小児総合医療センターに入院中の小児に付き添うご家族(患者さんのごきょうだいは除く)
利用料:無料
運営時間:9時から21時まで
運営開始日:2026年5月15日(金)
延床面積:165㎡(屋内97㎡+屋外デッキ68㎡)
「ドナルド・マクドナルド・ハウス ふちゅう」概要
住所:東京都府中市武蔵台2-9-2 東京都立多摩・小児総合医療センター宿舎等1階
利用対象者:都立小児総合医療センター、都立神経病院他に入院または通院中の20歳未満の患者と付き添い家族
利用料:無料(2026年4月1日より無償化)
設立日:2010年3月
部屋数:12部屋
ファミリールームとハウスの運営は、100%寄付と支援によって成り立っています。「東京都立小児総合医療センターファミリールーム」では、寄付や必要物品の提供といった支援を、今後も継続的に受け付けています。
DMHC 公式HP:https://www.dmhcj.or.jp/
寄付について:https://www.dmhcj.or.jp/support/
物品提供について:https://www.dmhcj.or.jp/familyroom/
東京都立小児総合医療センター 公式HP:https://www.tmhp.jp/shouni/index.html
結びに
子どもの入院に付き添うご家族は、お子さんの前では疲れを一切見せず、気丈に振る舞います。看護師長のお話にあった通り、「少し休憩してきます」とおっしゃっても、すぐに戻ってこられる方が多いといいます。
そのような姿は、当事者家族支援の現場で、私たちもしばしば目にしてきました。難病や障害のある子どもを支える保護者の方々が、ご自身を後回しにしながら走り続ける様子は、決して特別な話ではありません。
「家族を支えることは、子どもの医療を支えることに繋がる」という言葉は、小児医療に限らず、当事者家族支援全体に通じる視座です。
同一病院に「ハウス」と「ファミリールーム」の両施設が設置されるのは国内初の取り組みです。この新しいモデルが、東京都内にとどまらず、全国の小児医療現場へと広がっていくことを願います。
ドナルド・マクドナルド・ファミリールーム 東京都立小児総合医療センター
https://www.dmhcj.or.jp/jp-family_room/8284/
オンラインサロン「障害者ドットコム コミュニティ」に参加しませんか?
月々990円(障害のある方は550円)の支援で、障害者ドットコムをサポートしませんか。
詳細はこちら
https://community.camp-fire.jp/projects/view/544022


