エロトマニア~もしもその恋慕が病識なき妄想だったら
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もし自分の意思が他者を害するためだけに予めプログラムされていたとしたら、それほど恐ろしいことはありません。他人を傷つけ、それで疎まれ、信用を失っていく中で、自分だけが過ちを犯している感覚を持たない。メタ認知の欠如などと利いた風な口をきくのは簡単ですが、その原因や核に対処するのはとても容易ではありません。主に病識の面でハードルは大きいです。
妄想性障害の一つに「エロトマニア」というものがあります。観察した医師の名からクレランボー症候群と呼ばれることもあるそれの特徴は、ズバリ「被愛妄想」です。自分が相手から惚れられているという妄想は、最悪ストーカーなどの触法行為に発展しかねないので、どうにか対処したいものです。生涯有病率は0.2%(500人に1人)と微妙な数字で、男性より女性に多いとされています。妄想の相手は社会的地位の高い人物、とりわけミュージシャンや俳優などのキラキラした人間であることが多いです。
具体的にどのような妄想をするかというと、一例として毎回8時にSNSへ投稿するのを「その時間に生まれた自分への愛のメッセージ」と思い込むなどがあります。実際に接触しようと行動を起こすのは患者の中でもレアケースなのですが、ゼロとも言い切れません。エロトマニアには期待→憤り→恨みという3つのステージがあり、脈なし状態からの屈辱感が報復行動へ結びつくこともあるようです。
診断で重要視されるのは「異常性が恋愛に関する妄想だけかどうか」です。恋愛に関する妄想以外が至って正常であればエロトマニアの診断がつくという訳ですね。他の精神疾患があっても、気分障害など他の症状より恋愛に関する妄想のほうが長く出ていれば診断される可能性はあります。要するに、届かないものを追いかけている以外は普通であるという変わった基準があるということです。
治療法については患者によって変わるケースバイケースで、特にこれといったものは定まっていません。セラピーや家族治療など様々です。そもそも本人に病識があるかどうかの時点で相当キツいですし、決まった治療法がないとなるとそこらの医師では対処できるのか聞いているだけで不安になります。
参考サイト
ネトフリスリラー『YOU-君がすべて-』の主人公が抱える障害「エロトマニア」とは
https://www.womenshealthmag.com


