海外の方が生きづらい!?~発達障害が海外で暮らしてみた結果

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発達障害は日本では生きづらい!?

日本は発達障害への理解が遅れている。先進的な海外に行けばもっと良い生活ができる—そう考えて海外に憧れる発達障害の方に、これまで何度か出会ってきました。

では本当に、発達障害の人は海外の方が生きやすいのでしょうか?

発達障害を持ちながらオーストラリアで3年間幼稚園教諭として働いた私の結論は……

「NO」です。

日本の方がずっと生きやすいです。

それはいったいなぜなのか。

今回はその理由を
・人間関係
・仕事面
・生活面
・海外生活をしてよかったこと
の4つの視点からお話しします。

海外での暮らしに興味のある発達障害の方は、ぜひ最後まで読んでみてください。

1人間関係

海外では人間関係を築くのが本当に難しいです。

理由としては海外には日本以上に「自分の立場を理解すること」や「空気を読むこと」が必要とされます。

たとえば、白人のオーストラリア人なら多少だらしない格好をしていても許されますが、私たちアジア系の移民が同じような服装をすると「リスクのある移民」と見なされ、仕事をもらえなかったり、家を貸してもらえなかったりすることがあります。

さらに、もしひどい人種差別を受けても、感情的に反応して相手を殴ったり、大声で言い返したりすれば、永住権やビザの更新に不利になる場合があります。

そのため、どんな場面でも冷静さと穏やかな態度が求められます。

こうした背景から、移民として生きるには常に身なりを整え、空気を読んでトラブルを起こさず、「良い移民」として振る舞うことが必要になるのです。

「日本でも人間関係のトラブルが多い」「言ってはいけないことをつい言ってしまう」「感情を抑えるのが苦手」という人にとって、海外での人間関係はかなり難しいものになるでしょう。

2仕事面

特にオーストラリアのような人気のある先進国では、仕事を見つけるのが本当に難しいです。

理由のひとつは、英語圏の国では基本的に移民よりも「英語を母国語とする自国民」の採用が優先されるためです。

そのため、たとえ日本で東京大学を卒業し、TOEICが満点でも、自国民より特別優れた資格や経歴がなければアルバイトですら採用されないことがあります。

そんな中で、もし発達障害であることが知られてしまえば、「リスクのある移民」と見なされ、さらに採用のチャンスが減ってしまいます。

私自身も、発達障害であることを3年間隠し続けて働く必要がありました。

「発達障害であることを隠し通せる自信がない」「特別な資格や経歴があるわけではない」という方にとって、海外で働くことはかなり大変かもしれません。

3生活面

発達障害のある方なら、「面倒な手続きをつい後回しにしてしまった」「書類の提出期限を過ぎてしまった」という経験が一度はあるのではないでしょうか。

日本では多少の遅れがあっても何とかなることが多いですが、オーストラリアのような人気の先進国ではそうはいきません

手続きが少しでも遅れると、家を追い出されたり、仕事のシフトを減らされたりすることがあります。

なぜなら、こうした国には多くの移民がいて、家も仕事も常に競争状態にあるからです。書類を期限通りに出せない移民を、あえて選ぶ理由がないのです。

「手続きはつい後回しにしてしまう」「日本語の書類でさえ大変なのに、英語の書類なんてもっと無理」と感じる人にとって、海外での生活はかなりの負担になるかもしれません。

4海外生活をしてよかったこと

ここまでいろいろ書きましたが、それでも私は海外での経験が無駄だったとは思いません。日本人が海外で永住権を取るのは、ほぼ結婚以外に方法がなく、あまりおすすめはできませんが、1年以内の短期滞在であれば、むしろ積極的に挑戦してみる価値があると思います。

移民という弱い立場で生き延びるための社交術や忍耐力が身につき、同じように移民として暮らす人々への理解も深まります

視野が広がるという意味では、これほど濃い学びはありません。

そして何より大きかったのは、「現状に不満を持たなくなる」という気づきでした。日本にいた頃は、海外という“理想郷”に憧れ、そこへ行けばもっと幸せになれると思っていました。

けれど実際に来てみると、完璧な理想郷などどこにもないと分かったのです。本当に大切なのは、理想の場所を探すことではなく、今いる場所を理想に近づけていくことでした。

それでも「海外に行ってみたい」「新しい世界を見てみたい」と思う方は、交換留学や旅行、ワーホリなどで実際に体験してみてください。

もしお金や時間、勇気がまだ足りないという方は、「ライフハウス+県名」や「ミートアップ+県名」などで検索して、海外に関わるイベントに参加してみるのもおすすめです。

陣内マリア

陣内マリア

LD(非言語性学習障害)のある20代。とくに知覚推理の分野に大きなハンデがある。大学を卒業後、新卒で大手企業に入社したり、海外で幼児教育の資格を取って幼稚園で働いたりと、いろいろなことに挑戦してきた。けれど、発達障害にともなう困難から長く続けられず、どれも退職。今はライターとして細々と暮らしている。いつか自分にもできる仕事を見つけて、正社員として働くのが夢。

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