パニック障害で聴覚過敏の私が映画『えんとつ町のプペル』を爆音で楽しめた理由〜HSPと、ともに。<vol.45>
その他の障害・病気 暮らし エンタメHSPと、ともに。vol.45 <毎月1日連載>
「日本アカデミー賞」優秀アニメーション作品賞を受賞した私の大好きな映画『えんとつ町のプペル』についてお話します。煙に覆われ、空を見上げることを忘れた「えんとつ町」で、ただ1人星を信じる少年ルビッチとハロウィンの夜にゴミから生まれた心優しいゴミ人間のプペルとの友情や、亡くなった父との親子愛、家族愛を描いたとても素敵な作品です。絵もとても綺麗で、声も音楽もすべてが良いのです。
主人がどうしても観たいというのでお正月に観に行きました。今までたくさん映画を観ましたが、自分でもびっくりするくらいずっーと泣いていました。私は母を早くに亡くしていて、最近は、夢を追いかけていた大切な人をSNSの誹謗中傷で亡くしたばかりでした。それから過去に、ミュージカル女優になる夢を叶えたのに、舞台終了後に病気が発覚し、亡くなってしまった大切な親友がいます。いろんなシーンで重なり、涙が止まらなくなりました。そして、心優しく、とても可愛いプペルが大好きになり、次の週にもプぺルにまた会いたいと思うようになり、今では毎週映画館へ行っています。エンドロールで、製作総指揮・原作・脚本 西野亮廣と見た時も、本当に感動しました。たくさんバッシングされているのを知っていたので、「やった!!ものすごい映画作ったな!!」と、とても誇らしく思いました。
「異端者」を排除するえんとつ町で叫ぶルビッチのセリフに、心の底から涙が溢れました。自分もずっと異端者でいやな思いもしましたし、数少ない大切な人はもう亡くなってしまった。しかも、夢を叶えるために一生懸命頑張っていたのに、SNSの誹謗中傷で亡くなってしまったので、亡くなる前に、この映画を観せたかったなと思いました。夢を追いかけていた大切な二人が生きていて元気だった頃に、一緒に過ごした宝物のようなキラキラした時間を想い出すような素敵なシーンがたくさんあり、私は観るたびに強くなっていきました。映画を観ることで、カウンセリングを受けているような感じになります。うまく話せませんが、心の整理ができて浄化していくような感覚です。ネタバレしないように、ストーリーは書きませんが。車いすに乗っているお母さん、おしゃべりな人、口数が少ない人、登場する人たちはいろんな人がいて、多様性に富んでいます。人との違いを否定せずに楽しむことができたらもっと優しい世界になるのでしょう。相手の事情も考えず自分が正しいと、非難する人が多いように思います。
主人が西野さんを尊敬していて、YouTube動画をよく流しているのを聞いていたので、気になって西野さんについていろいろ調べていたら、一緒に映画が観れるとわかりました。私は大阪に住んでいるので、チケットを取ってTOHOシネマズなんばに行きました。西野さんは音が大きい映画館が好きで、私は音に敏感で、パニック障害もあって、心臓に響くのは発作が起きる可能性もあるのですが、その時はなぜかとてもワクワクして観ていました。そもそもTOHOシネマズなんばは建物の8階で、私にとっては高所恐怖もありますが、行きたい気持ちの方が強くてチャレンジしました。パニック障害がある人が8階の映画館で、爆音で映画を観るなんてすごいことなんです。結果めちゃくちゃ楽しかったです。ここにいる方たちは西野さんや映画のファンで、きっとみんな優しいと思い、安心感があったからです。
TOHOシネマズなんばは、本当に爆音で冒頭のルビッチとプペルがトロッコで走るシーンは、USJのアトラクションに乗っている感じを思い出しました。楽しかったので、次の日も西野さんと一緒に観ました。席が2つ前にいらっしゃって、すごく近くて緊張するので、本人を見ないようにしていました。倒れたら迷惑がかかりますし、邪魔をしたくなかったので。
この映画は、スマートフォンの「HELLO! MOVIE(ハロームービー)」というアプリを使って2種類の副音声が楽しめます。バリアフリー版は、目の見えない方のための説明がされています。コメンタリー版は、西野さんが映画の見どころや裏話など解説をしてくれています。私はコメンタリー版をイヤホンで聞いてみました。すぐ近くに本人がいる8階の爆音の映画館で、おまけに副音声でイヤホンからは本人がずっと喋っている声が流れています。それもとても楽しかったので、もう音に敏感なことやパニック障害など、一気に乗り越えられました!
次の週も西野さんがなんばや梅田に来られたので、一緒の時間のチケットを取って観ました。近くで会ったら会釈してくれるし、暗がりの中、目がキラキラしていて、この人はぜったい良い人だと思いました。梅田は大きい映画館で、700人以上の方で満席になっていました。人混みもパニック障害には恐怖なのですが、大丈夫でした。映画がとても面白くてこの時すでに6回目だったのですが、まだいろんな発見があって泣けました。エンドロールが終わり、会場の700人以上の方のスタンディングオベーションの中、西野さんが長いお辞儀をされたとき、とても感情が伝わってくるように感じてジーンとしました。また席が近かったので、はっきり見えました。
帰ろうとしたところ、傘がないことに気づきます。それは、SNSの誹謗中傷で亡くなった大切な人が大切にしていた遺品の傘です。失くした時が手放す時かなーと思っていたので、もうお別れかなと寂しくなっていたところ、スタッフさんに見つけていただき、感謝して家に帰りました。「西野さんが夢を追いかける人を応援してくれる映画をつくったよ!天国で観てるかな?私も頑張るよ」と話しました。顔も西野さんに似ていて親近感がわきます。この梅田での上映が、西野さんにもとても良かったそうで、1月31日のTOHOシネマズ梅田のスクリーン1に3回連続でずっとおられるそう。また主人と一緒に観に行きます。この映画は映画館で観た方が臨場感があっておすすめです。コロナ対策をしっかりしてぜひ観てもらいたいです。
私のパニック障害、聴覚過敏、心の問題が、映画『えんとつ町のプペル』と西野さんのおかげで乗り越えられたという話をさせていただきました。西野さんものんちゃんという大切な方を亡くされた話をされていた事がありました。私もたくさんの作品を遺してもらっていて宝物になっているので、本当に良かったなと心の底から思いました。私にも夢があります。まだまだ障害者差別や偏見を感じます。みんなが暮らしやすい社会になるように、日々頑張っていきます。
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