誰も咎めない筈の「最強の笑い」が敗れる
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Photo by Anita Jankovic on Unsplash
「男磨きハウス」というAbemaのリアリティショーが炎上しているようです。「テラスハウス」の亜種でしょうかね。非モテで中年の弱者男性を男磨きと称した合宿に連れ込み、変質者みたいな格好でナンパさせて玉砕する様子を嗤うという内容です。なお、弱者男性たちはマイナーな芸人や役者が演じていたという声もありますが、それはそれで「弱者男性を笑い者にする作品で皆で盛り上がって褒められたい!」という欲望の発露が問題になりそうですね。
きっと身内では「最強の笑い」と確信されていたことでしょう。ポリコレの隆盛で笑い者にできる属性が激減した昨今でも、変わらずに安心して叩ける層が存在します。それが弱者男性であり、中年男性であり、非モテ男性です。他にも境界知能や発達障害や性犯罪者など安全なターゲットはいますが、兎に角反撃の恐れも無ければ叩いても咎められない「最強の笑い」を見出していたのではないでしょうか。ポリコレだろうとコンプラだろうと止められない聖域、安心して叩き笑い者に出来るセーフティネット、そのように映っていたと思います。
ところが現実は、炎上騒ぎになりました。「往年のイジメバラエティの悪い所だけ真似した駄作」「司会も、いじめっ子になりたかったいじめられっ子に過ぎない」「テラスハウスの過ちから何も学んでいない」と非難轟々でした。なぜ炎上したのか、なぜ「最強の笑い」が敗れたのか、なぜ誰も咎めない筈の無敵のエンタメが認められなかったのか、大衆の笑いのツボからすると不思議ですね。
結局のところ、叱られることなく安心して叩ける安全地帯など幻想に過ぎなかったのではないでしょうか。それとも、昭和~平成中期のイジメバラエティにNOが言えて、どんな層が相手でもイジメで笑いを取るのは時代遅れと言えるくらい人々が成熟したのでしょうか。なんにせよ、絶対ウケると思った渾身のネタが滑ったことで番組制作班にもいい学びの機会となった筈です。反省して今後に活かす度量と甲斐性があればの話ですが。
どうしても「誰にも怒られない究極のイジメバラエティ」にこだわるのであれば、性犯罪の前科持ちでも狙えばいいのではないでしょうか。どうせ「素人モノ」みたいにマイナーな役者を仕込んで済ませるんでしょうし、「元ピンク更生ハウス」に賭けてみましょう。それでまた怒られるようであれば、もはやイジメバラエティなど求められていない証明になります。


